検査項目解説


ウイルス抗体検査における結果の解釈

ウイルス特異抗体の検出は、直接そのウイルスそのものを検出するのではなく、感染を受けた宿主の免疫応答を示すにすぎず、補助診断の域を越えない。これら検査成績の評価に当たっては、非特異性反応の有無、その疾病とは関係のないウイルスによる不顕性感染の同時進行、ウイルス型にまたがって反応する異型抗体による交差反応、あるいは宿主側の免疫不全などについても考慮する必要がある。したがってウイルスと疾病の因果関係については、臨床所見、ウイルス学的検査、血清学的検査などの結果を総合して判断する必要がある。  

通常、ウイルス抗体測定を用いた初感染における感染初期診断は、急性期とその後2週間程度経過した時点で採血した血清(ペア血清)を測定し、4倍以上の上昇または有意な上昇を確認することにより行う。したがって単一血清の測定では意義を判断できない場合が多い。

しかし特異IgM抗体陽性で、特異抗体価が異常に高い値を示した場合は、ある程度感染を推定できるとも考えられている。この場合、リウマチ因子などIgM抗体に対する非特異性反応や、ヘルペスウイルスなど潜伏感染するものの再活性化などについて、特に注意が必要である。また、終生免疫の診断に際しては、風疹HI抗体検査などにおいて、特異抗体の有無を確認することで過去の感染があったかどうかを判断することが可能で、ワクチン接種の必要性などの評価に有用である。一方、持続感染の形態をとるHIV、ATLなどのレトロウイルスの特異抗体陽性者は、終生にわたるウイルス保有者と判断される。

ウイルス抗体検査法別の特徴
(1)中和試験(NT)
感度、特異性が高く、エンテロウイルス属(コクサッキー、エコー、など)など、ウイルス型の同定に多く用いられ、感染防御効果を調べる上では最も信頼性の高い検査である。しかし、検査に長時間を要する欠点をもつ。
(2)赤血球凝集抑制(HI)試験
感度、特異性が高く比較的簡便で短時間に抗体を検出することができるので、中和試験に代わって多用される。ヘルペス群ウイルス(HSV、VZ、CMVなど)などの赤血球凝集能を持たないウイルスの検査ができないといった欠点をもつ。ムンプス、パラインフルエンザウイルスの感染では、異型抗体による交差反応が起こるケースがあり、結果の解釈には注意を要する。
 (3)補体結合(CF)試験
群特異性を持ち、比較的短時間で検査を行うことができるので、HI試験が不可能なウイルス、またアデノ、エンテロウイルスの群決定、インフルエンザのA型、B型決定などに用いる。ムンプスウイルスについては、交差性がほとんどないS抗原を用いることで感染初期抗体を検出することができるので、有用である。非特異性反応として、抗補体作用、正常抗原反応があり、検査が不能になることもあり結果の解釈には注意を要する。
 (4)酵素免疫測定法(EIA)
感度が非常に高く、特異性に優れ、免疫グロブリンクラス別の定量的抗体検出が可能。サンドイッチ法、競合法、IgM補足法など種々の方法があり、同項目でも原理およびキットによって特性が異なる。高感度である一方、自己抗体などによる偽陽性反応が認められることがあり、結果の解釈には注意を要する。
 (5)間接蛍光抗体法(IFA)
感度、特異性が高く免疫グロブリンクラス別の測定が可能。EBウイルスでは、感染後各時期に出現する抗体検出が可能であり有用である。細胞、組織などを直接スライドガラス上に固定して抗体を反応させる。蛍光顕微鏡で肉眼判定するため、検査の均質化がむずかしく判定に主観が伴う。このため他手法に比べ、非特異性反応や誤差を生じやすいといった欠点をもつ。
 (6)受身(赤血球)凝集法(PA/PHA)
赤血球(PHA)、ラテックス、ゼラチンなど(PA)の担体に抗原を結合させたものに検体を反応させるという簡便な方法のため、極めて短時間で抗体検出が可能であり、感度・特異性に優れる。特にPAは、人工担体を用いるため、非特異性反応が少なく、抗体のスクリーニングに適する。


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