抗てんかん剤や麻酔剤として用いられている薬剤である。本検査はバルビツール酸系薬物を誘導体別に測定する検査である。

　バルビツール酸（barbiturate）は1864年にドイツのバイエルらによって合成された150年もの長い歴史を持つ薬物であり、名称は聖バルバラ（barbara）と尿素（urea）の合成語に由来するといわれている。

　現在でも広く抗てんかん剤や麻酔剤として用いられているが、不眠症治療のための睡眠導入剤としてはベンゾジアゼピン系が多く用いられるようになっている。

　バルビツール酸は主に、抑制的神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸（GABA）の作用を増強することにより中枢神経系を抑制し、抗けいれん作用を発揮するため、フェノバルビタールなどがてんかん治療に広く用いられている。

　精神科領域においては過量服薬がしばしば問題となるが、多くの薬物は生命に関わることは少ないとされている。しかし、バルビツール酸の過量服薬では重症化することがあり、特に救急医療の場では救命後の治療のため、服用薬物の同定が有用とされる。また、バルビタールを例にとると最低致死量と最高常用量の差が約10倍と非常に狭く、膨大な量を服用する必要性が低いため、自殺目的に用いられることも珍しくない。

　バルビツール酸には簡易検出試薬もあるが、本検査はバルビタール酸系薬物を誘導体別に測定するため、実際に服用された薬物を判別・特定することによる確定検査が可能である。

　また、企業の特定薬物検査の必要性が高まっており、職域における乱用を抑制するためにも有用と考えられる。